2004-02-07-Sat 偽ロック様大人気

_ WWEロウ組のさいたまスーパーアリーナ公演(という呼称になっている)に行く。カードと結果はこれこれ

俺の席は2000円のもので、ほとんど天井に近い位置。ただ個々のスペースはきっちりと確保されているし、
ドリンクホルダーもあるし、球場における接待席を簡略化した感じでもある。値段の割に満足。すりばち型の傾斜がかなり急なせいもあり、
リングの見晴らしは素晴らしく良かった。
今回は4時間以上にも及ぶ長丁場(今までで一番長かった)。しかしダレることはなく、冗長さは感じなかった。

開演前の場内を暖めていたのは、今日も今日とて偽ロック(コスプレの人。今回のツアーには全部出没したらしい)。
出過ぎたマネをせず、ひたすらマネをしているだけというのが嫌われないポイントなのだろう。通路でピープルズエルボーを決めていた。
ケイン、ミステリオ、マット・ハーディー他の選手のコスプレもいるのだが、彼らはいずれもロックのためにかすんで
「アイドルグループにおける人気メンバーとそうでない人」状態になってしまっていた。やっている本人としてはかなり忸怩たる思いだろう。

18:00、ほぼ定刻どおりに試合開始。これまでWWE日本公演を見た限りでは、選手も観客も、第1試合に必要以上に気合いを入れてしまう傾向がある。
今回もそうではあったが、場内のテンションはずっとキープされていた。

印象に残った点を列挙すると、俺ベストマッチは第4試合。さすがにここにくると、「テレビで見ている人がここにいるぞ」感が高くなる。
ダッドリーズ対フレアー、バティスタ。フレアーの千両役者ぶりが際だった内容。豪華なガウンで入場する選手は今や少ないが、
フレアーはスパンコール・ラメ系の光沢を放つ、おなじみのゴージャスなガウン。タイツとシューズは赤。
個人的には紫か水色ならもっと良かった。入場曲が所属ユニットのエボリューション(モーターヘッド)だったが、
できればフレアーは「ツァラトゥストラはかく語りき」で単独入場してほしかった。
ただでさえドリフ度の高いWWEの中にあって、最もその度合いが高いと思われるうちの一人リック・フレアー。
俺のプロレス観戦歴とともに蓄積されてきた彼の持ちネタを惜しげもなく披露してくれたのが嬉しかった。
フレアーチョップ、フレアーウォーク、フワリと落下するショルダースルー、タイツをずり下げられて半ケツ状態、
さらにそのままコーナー上からデッドリードライブ、相手に追いつめられてひざまづいて「ノー」、コーナーに投げられてもんどり打つなど。
そういうふうにさんざんやられた後、何歩か歩いて味方の前でドタンとダウン、足四の字(「ひっくり返されるとかけてるほうが痛い」もセット)、
そして随所にWHOOOOという絶叫。彼は一目瞭然のお約束を持つ者の強みを存分に発揮。
フレアーはポジション的にはいかりや(世代的にはクレージーキャッツか)なのだろうが、スタイルは完全に加藤&志村。
WHOOOO=ヒックシュン。相手のダッドリーズがドリフ度・完成度ともに高く、フレアーの味がより生きたとも言える。

第5試合後に、悪のGMビショフとそれに反逆するスティーブ・オースチンとの対決スキット。
ここで感動したのは、リングサイドに控えるビールの渡し役のコントロール。ビール缶といえば結構重いぞ。それを指示通りに的確にパスするのだ。
いったいいくつ用意してあるのかわからないほど大量のビール缶がまたたく間に消えていくのだが、
このトスの見事さ、そして休憩時間にビールまみれになったリングとその周辺を、まるで鑑識課員のようにはいずり回って清掃するスタッフの
動きが素晴らしかった。きびきびしたプロっぽさというのは人の心に響くものである。

アメリカでの格付けからいったらとてもセミファイナルにはラインナップされないと思われるリコ対テストの試合の、
典型的ベビーフェイス対ヒールの図式もよかった。リコはモミアゲのおかげで日本限定の人気者に成長した。

第8試合(メイン)は世界タイトル戦。王者HHH対HBK(ハートブレイク・キッド)ことショーン・マイケルズ。
今頃わかったのだが、HBKは全盛期のデヴィッド・リー・ロスがモチーフなのだろう。悪の気高さをまとったHHHからは、
天龍同盟時代の天龍と近いオーラを感じた。HBKの花道でのキメポーズ、HHHのエプロン上での水噴きのときのフラッシュの流星群の見事さ。
試合はじっくり・こってり型の展開。元々試合巧者型の両者だということもあるが、日本のプロレス関係者に根強い、
「アメプロは基礎ができていない」という偏見にはまったく当てはまらないと思った。
HBKはコーナートップからのエルボー、何度かブロックされた伝家の宝刀スイート・チン・ミュージックを不意打ちで決めたが、
HHHの必殺技ペディグリーの前にフォールを喫した。HHHは日本なら確実に大型の部類に入るが、
ファイトスタイルが全然大型レスラーチックじゃないのが面白い。HBKは遠目にもわかるほど小柄だが、
試合を転がすのがうまい。試合巧者としては、フレアーとはまた違うタイプ。

全試合が終わったときには既に22時を回っており、さすがに電車がヤバいというのがよぎったので、俺はすぐに会場を後にしたが、
実はこの後オースチンが再登場し、ビールパーティーパート2というおまけがあったらしい。横浜アリーナじゃなくて残念無念。

相撲でいう砂かぶりの席には、俺が確認した限りではKONISHIKI、高木三四郎などがいた。
他にもHBK(仁・ボッシュート・草野)こと日本のWWEファンの良心・草野仁、武蔵丸などがいたようだ。
その中で最大の驚異はKONISHIKI。ほとんど天井に近いところからでもKONISHIKIは一瞬で見分けがつくほど大きかった。
周りが黒っぽい服なのに彼だけ白いシャツだったこともあり、その一角だけ「巨大な物体」が鎮座しているようだった。
彼は数々のレスラーから握手を求められたりしていた。